楽になるには"コツ"がある

広島県東広島市にある「すじと骨の けんびきや」のブログです。

逆腹式呼吸、かなり有能説。

 前回の続きから。
 今回は逆複式呼吸をオススメする理由になります。
 ここ数回分の記事と合わせての内容になりますので、まだ読まれてない方はリンク先の記事を読んでみてください。

kenbikiya.hateblo.jp

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 さて、前回の最後にけんびきやで指導する逆腹式呼吸のやり方を書きました。

 1.まず、息を吐き切ります。
 2.息を吸います。この時、お腹に力をいれてへこませて(引っ込めて)ください。お腹の上部(みぞおち)をへこませるイメージです。
 3.息を吐きます。この時、お腹の上部(みぞおち)をへこませたまま、締めるように力を入れてください。そして上腹部に入れた力を下腹部に落とすイメージで、下腹部を膨らませます。それが分かりにくければ、下腹部を両手で押さえてその手を押し返すイメージです。

 この方法だと、たぶん世間一般に言われている逆腹式呼吸とは違う部分があると思います。その違う部分が「ちょっとした〝コツ〟」になります。それがどこか分かりますか?
 そうです。息を吐くときに「お腹の上部(みぞおち)をへこませたまま、締めるように力を入れてください。」という部分です。
 ここで呼吸について簡単に復習しましょう。前回の記事の中で『吸気は筋肉の収縮によって胸郭を広げますが、呼気は筋肉の弛緩によるものなので肺の弾性のみで行われ通常は筋力を必要としません。』と書きました。
 この時、吸気(吸う)時に起こる胸郭(肺のある空間)が広がる現象は、横隔膜と外肋間筋(肋骨の間にある筋肉)の収縮の収縮によって起こります。これによって肺が膨らみ空気を吸い込みます。
 そして呼気(吐く)時は横隔膜と外肋間筋(肋骨の間にある筋肉)が弛緩することで胸郭が狭くなりますが、この時に膨らんだ肺は元の大きさに戻ります。それは空間が狭くなるからというよりも、肺のもつ弾性(伸び縮みする力)によって元の大きさに戻ります。すると肺の大きさが小さくなり、中の空気(主に二酸化炭素)が吐き出されます。
 だから普通に呼吸をしていて息を吐く時には筋力を必要としません。
 つまり、逆腹式呼吸であっても呼気(吐く)時に「力を入れる」必要はないのです。実際、逆腹式呼吸のやり方を調べても「吸うときにお腹をへこませて、吐くときにお腹を膨らませる」と説明している所が多いと思います。
 けんびきやでは最後に「下腹部を膨らませる」とは言ってますが、腹筋そのものには力を入れてもらうように指導しているので目に見えて大きく膨らむということはありません。

 ではなぜこのように指導しているのかと言うと、常に腹圧をかけてもらうためです。
 逆腹式呼吸では吸気(吸う)時にお腹に力を入れてへこませることで腹圧をかけます。そして呼気(吐く)時にも腹筋に力を入れてもらうよう指導することで腹圧をかけています。
 腹圧の重要性については『おい腹筋と背筋、もうお前たち付き合っちゃえよ! 内から支えることの重要性。』で次のように書いています。

 腹筋を使って腹圧を高めることにより腰を含む腹腔周りがその影響を受けるのです。
 ということは腹筋を意識的に使うことで、腰の負担は減らすことができるということになります。

 しかし腰痛の予防になると言っても、日常生活の中で常に腹圧をかけて生活をするというのはなかなか難しいです。そこで「普段から行っている呼吸の中に腹圧と言う要素を組み込んでもらう」ためにけんびきやでは、呼気(吐く)でも吸気(吸う)でも腹圧をかけることのできる〝逆腹式呼吸〟を勧めているのです。
 ……と書くと〝腹式呼吸〟や〝胸式呼吸〟じゃダメなの? って思う方もいると思います。
 ではここで腹式呼吸と胸式呼吸について、簡単におさらいしてみましょう。

 腹式呼吸はご存じの方も多いと思いますが、吸うときにお腹を膨らませる呼吸法です。
 ここで勘違いしてはいけないのは〝腹式〟呼吸だからと言って、お腹で呼吸しているわけではないということです。どの呼吸法にも言えることですが、呼吸の主役はあくまで横隔膜です。
 息を吸った時にお腹が膨らむのは腹筋を使ってお腹を膨らませているからではありません。横隔膜が下がるという動きがお腹に伝わっているから膨らむのです。
 むしろ腹筋は緩んでいます。
 「でも、息を吸うときに〝お腹を膨らませて〟って言うのに?」と思ったアナタ、なかなか鋭い。
 お腹を使わないのに膨らませるというのはどういうことなのか? それは腹筋を意識的に緩めると言い換えることもできます。
 腹式でなくとも呼吸をする以上、お腹というのは多かれ少なかれ膨らんだり縮んだりしています。それは意識しない呼吸(通常行われる安静呼吸)の時も同じということです。呼吸は横隔膜の働きである以上避けては通れない事象なのです。

 では意識しない呼吸であってもお腹が膨らむ(腹筋が緩んでいる)のに、わざわざ腹式でお腹を膨らませる意味はあるのか?
 ここで一つ実験をしてみましょう。

 ・お腹を引っ込めてみてください。お腹を膨らませる話をしているのに引っ込めると思った方も、まずお腹を引っ込めてみてください。
 ・次にその状態から今度はお腹を膨らませてください。

 みなさんは、どうやってお腹を引っ込めました? 多分、殆どの方はお腹に力を入れて引っ込めたはずです。
 逆にお腹を膨らませる時はどうでしたか? 多分、殆どの方はお腹の力を抜いたと思います。
 お腹を引っ込める事と膨らませる事。真逆のことをしているのに共通点が一つあります。それが何か分かりますか?
 そうです。どちらも〝お腹を意識して〟力を入れたり抜いたりしているのです。〝お腹を意識して〟膨らますことでより力は抜けます。腹筋が緩むことでお腹は膨らみやすくなり、腹腔内の圧力は減り横隔膜の収縮を助けることになるのです。
 腹式呼吸というのはお腹を使うというよりも〝お腹を意識する〟呼吸法と言い換えることができます。

 次に胸式呼吸です。
 腹式と同じ書き方をすれば胸式呼吸とは〝胸を意識する〟呼吸法ということになります。
 もちろん胸(胸郭)は肺という器官があるので呼吸をしている部分です。しかし胸式呼吸は〝胸を意識して〟胸郭を膨らませることで、無意識に行う呼吸よりも多くの空気を肺に送り込むことができます。
 腹式と違うのはなにも意識する場所だけではありません。腹式では腹筋を〝緩める〟ことで横隔膜の動きを助けましたが、胸式では逆に筋肉を収縮させることで横隔膜の動きを助けます。
 胸式で収縮させる筋肉は胸鎖乳突筋・前斜角筋・中斜角筋・後斜角筋・内肋間筋といった呼吸補助筋です。主に胸郭上部にある筋肉を使って胸郭(肋骨)を広げているのです。
 胸式は骨格筋を使う呼吸法なので、動きを意識しやすい呼吸法でもあります。

 どうですか?
 腹式呼吸は吸気(吸う)時に「お腹を膨らませる=腹筋を緩める」ので腹圧はかけられません。また呼気(吐く)時も体の力を抜いて緩めることで行われるので腹筋は使いません。
 腹式呼吸がリラックスをするときに良いと言われる所以です。余計な力を抜いて呼吸ができるので、体の緊張をとるのに向いています。 
 胸式呼吸はそもそも〝お腹ではなく胸を意識して〟行うので腹圧をかけことはできません。正確には不可能ではないですが、それをすると胸郭をしっかり膨らませるのが難しくなり胸式の意味がなくなります。
 胸式で吸気の時にお腹がへこんで見えるのは、膨らんだ胸郭に腹部が引っ張られてへこんで見えるだけでお腹に力を入れているわけではないのです。
 但し腹式であっても胸式であっても、息を吐く時に意識的にお腹に力を入れれば、呼気(吐く)で腹圧をかけることは可能です。
 しかし腹式と胸式では吸気(吸う)・呼気(吐く)の両方で無理なく腹圧をかけるというのは難しいのです。
 ですが逆腹式呼吸であれば吸気(吸う)・呼気(吐く)のどの状態でも無理なく腹圧をかけることが可能です。ちなみに逆腹式呼吸も〝お腹を意識する〟呼吸法と言えます。

 何度も書きますが、腹筋を意識的に使うことで腰の負担は減らすことができます。
 いつも逆腹式呼吸をするというのは難しくても、重いもの持ち上げないといけない時だけでも逆腹式呼吸によって吸気(吸う)・呼気(吐く)のどちらでも腹圧をかける方法を知っていれば腰痛の予防になります。
 そして腹圧をかけるクセができれば、姿勢も変わってきます。
 腹圧をかけるという腹筋の使い方は最初は意識しないとできないことかもしれません。しかし何も特別なことではありません。カラダに最初から備わったごく当たり前の機能の中でちょっとした〝コツ〟を意識すれば使えるようになります。
 更に意識的に続けていれば、それはやがて〝クセ〟になり無意識にできるようになります。

 実は逆腹式呼吸というのは、世間が思う以上に有能なのではないかと私は思うのです。

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